睡眠障害について

 良質な睡眠は、健康で快適な生活を送る上で、とても大切な要素です。最近の研究では、短い睡眠時間でも他の人と同じ様に生活をすることが出来る人、いわゆる “ショートスリーパー” と呼ばれる人は実際はほとんど存在せず、大部分の人は、大人でも7時間以上の睡眠時間をとる必要があることが知られています。
 睡眠は、昼間の活動で疲れた脳の機能を回復し、認知症や生活習慣病の予防、また、心のバランスを整えることなどに重要な役割を果たしていると考えられています。しかし、実際、このようなに適切な睡眠をとることが出来ている人は非常に少なく、多くの人が睡眠障害に悩まされていると言われています。

 「寝つきが悪い」「熟睡できない」「夜中何回も起きてしまう」などと訴える患者さんに対して、精神科のお医者さんならば、睡眠薬を処方してくれるでしょう。勿論、薬を飲まずに眠ることが出来れば問題はないのですが、どうしても眠ることが出来ないという場合には、こういった方法も止むを得ないのかもしれません。
 ただ、睡眠薬は使い方を間違えると、事故や依存症などに繋がる恐れがあります。お医者さんの指導にきちんと従って、十分に危険性を理解した上で服用する必要があります。

 不眠の原因は何でしょうか?そのことを探るために、睡眠のメカニズムを調べてみましょう。人間を始め、多くの生物は、体内時計と呼ばれる細胞の仕組みを持っています。朝起きて夜眠るという一日のサイクルも、この仕組みによってスムーズに進んでいると考えることが出来ます。
 睡眠は、この体内時計に従って、メラトニンという物質が分泌されることによって誘導されます。このメラトニンは、昼間、脳内で分泌されるセロトニンを原料にして作られます。覚醒と睡眠というリズムは、セロトニンとメラトニンという二つの物質がバランスよく働くことで成立しているのです。

 よい睡眠をとるためには、規則正しい生活をしながら、十分なセロトニンを分泌するようにすることが大切なことになります。以前『リズム運動でセロトニン分泌を高める。』という記事でご紹介しましたが、セロトニンは、朝日を浴ること、リズム運動をすること、グルーミングなどで活性化することが知られています。
 テニスの世界で長らくトッププレーヤーとして活躍してきたスイスのフェデラー選手は、夜10時間寝て、さらに、昼寝を2時間するそうです。高度なパフォーマンスを維持して活躍し続ける秘訣は、12時間という長時間睡眠にあったようです。
 皆さんも、豊かな人生を歩むことが出来ますよう、質が高く十分な睡眠を心掛けてみてはいかがでしょうか。